国際相互承認

1. 背景

90年代には資本主義の拡大や地域協定による国境概念の変容、そして情報システムの急速な発達の結果、マーケットが世界へと拡大しました。このような環境変化の下、組織(企業等)は最適な生産地と市場を求めて国境を越えて活動し、原料・商品、あるいは資本や技術までも世界中を自由に流通させる必要が生まれました。
モノが自由に流通するためには「貿易障壁の除去」が必要になります。国毎に規格が異なっていては自由な物流が阻害され、非関税障壁の一つとなります。そこで、「各国の異なる規格や適合性評価手続き(規格・基準認証制度)が貿易の技術的障害(Technical Barriers to Trade 商品の自由な流通が必要以上に妨げられること)とならないような仕組みが必要となりました。これはウルグアイラウンドのテーマにもなり、「規格の世界的統一」に向けて1995年にWTO/TBT協定が締結されました。

1995年1月に発効したWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)は国際貿易の円滑化をはかるために、WTO加盟各国に対して内外無差別原則と手続きの公開を義務づけました。具体的には国際規格(ISOもこの中のひとつ)との整合性、認証制度における国際規格の採用等があげられ、各国ごとの独自の基準や規格や、それらに基づく認証制度の制定や運用が不必要な貿易障害とならないよう未然に防止することがその主旨です。これは、各国間で相互に相手の実施した適合性評価の結果を認めあう「相互承認」の推進を奨励することを意味しています。

2. 規格の国際化

TBT協定では、 各国の強制法規、任意規格の作成に当たって、国際規格が存在する場合にはそれを基礎とすること、 透明性を確保するため、各国の強制法規当局や標準化機関は、基準の内容をWTO事務局に通報すること等を加盟国に義務付けています。これにより、各国の規格(国内規格・国家規格)は国際規格と一致し、整合性が図られるようになりました。

さて、ここで言う「国際規格」「国内規格・国家規格」とは一体どのようなものなのでしょうか。国際規格とは、世界の国々に開放されている国際的組織によって制定され、国際的に適用される規格を示します。ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)規格が代表的なものとされています。一方、国内規格・国家規格とは、国家または国内標準機関として認められた団体によって制定され全国的に適用されている規格で、我が国においてはJIS、JASがこれに当たります。
TBT協定締結後、国際規格は加盟国の国家規格に基づいて、各国のコンセンサスにより共通の規格として作成されるものとなりました。つまり、日本のJIS規格はISO規格に準拠されるようになり、例えば、ISO 9000シリーズおよびISO 14001は、正式にはISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)から発行されていますが、日本においては、違うところなく日本語に訳され、JIS規格になっています。

 

TBT協定・図

 

もともとISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)は、1947年に、ヨーロッパの国々を中心に国際的に通用させる規格や標準を制定するための国際機関(電気分野を除くあらゆる分野)として発足していました。しかし、TBT協定締結後、国際規格の重要性が高まり、ISOの参加国もヨーロッパから全世界へと広がりました。

ISOと密接な関係を持つ機関としてIEC(国際電気標準会議)があります。ここでは電気工学と電子工学分野に関する標準化を行っています。

また、CEN(欧州標準化委員会)はヨーロッパにおける電気工学、電子工学以外の分野の標準化組織です。1991年に、ISOとCENの間では規格開発における相互の技術協力に関する協定(ウィーン協定)が結ばれています。

3. 基準認証制度の国際化

自由貿易を目的に「国際規格」への統一化が進む一方、規格そのものだけでなく、基準認証制度も国際間で「相互承認(Mutual Recognition)」を行うことで、整合性を図る動きが活発になりました。基準認証における相互承認協定とは、基準認証の手続が両国間で異なる場合であっても、自国の基準に基づいて行われた認証結果を相手国内でも受入れる制度のことをいいます。当初は、各国の認証機関同士が審査結果について相互承認することが想定されていました。しかし、認証機関の出したそれぞれの審査結果を同等だと認めるには、審査結果が膨大な量になるため、審査結果でなく、認定機関同士の相互承認に代わることになりました。

国際組織間での相互承認は90年代後半から活発になりました。

 

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