JAB環境ISO 10周年記念大会 開催報告(概要)
2007年 4月17日
財団法人 日本適合性認定協会
本協会は2007年 2月16日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールにて、「JAB環境ISO 10周年記念大会」を開催致しました。本大会は、2006年度は環境マネジメントシステム審査登録制度が開始されて10周年にあたることを機会に、過去10年間を総括し、今後の発展を展望することを目的に実施したものです。
冒頭、本協会専務理事・井須雄一郎から、ISO 14001の最近の動向や、環境マネジメントシステムをめぐるトピックスの紹介がありました。加えて、JABは今後、(1)ISO 14001を経営システム改善ツールとして活用する (2)地球温暖化防止行動計画の推進ツールとして活用する (3)対象層を広げて環境活動への意識向上とレベルアップを図る (4)審査登録制度の信頼性を損なうような事例の撲滅、の4点を重点的に活動していく、と述べました。
続いて、特別講演、制度10周年の総括と今後の展望、及び、「JAB/ISO 14001研究会」の研究成果の発表がありました。概要は以下のとおりです。
- 特別講演 「産業活動における環境マネジメントシステムの役割」
社団法人 日本経済団体連合会 環境安全委員会 共同委員長 鮫島 章男 氏環境問題に対する産業界全体のアプローチと、環境マネジメントシステムの役割について述べられた。1997年に策定された経団連の「環境自主行動計画」を紹介し、各業種の実体を最も把握している事業者自らが対策を立案・実施することの有効性を強調。個別組織においては、全社的リスク管理体制の中で環境マネジメントシステムを見直していかねばならない、との提言があった。また、今後については、地球にかける環境負荷を低減するという倫理的規範に沿った行動全般を誘導する仕組みを作るために、環境マネジメントシステムの果たす役割は非常に大きい、との意見が示された。
- 「制度10年の総括と今後の展望」
財団法人 日本適合性認定協会 井口 新一環境マネジメントシステム審査登録制度が環境マネジメントシステムの普及に果たしてきた役割と成果を検証し、本制度を取り巻く利害関係者やユーザーの状況変化について解説。また、本制度の次の10年の更なる発展のために、2015年のあるべき姿「ビジョン2015」構想と、達成のための行動を提言した。
本WG(ワーキンググループ)研究成果の詳細は、報告書(PDF 1.43MB)をご参照ください。
続いて、JAB/ISO 14001研究会メンバーより各WGの研究成果が発表されました。本研究会は各ステークホルダーにて構成され、3つのWGが2006年夏から研究活動を開始し、数か月間をかけて議論を展開しました。
- JAB/ISO 14001研究会報告 WG1
効率的なシステムづくり -中小企業への普及のために- 吉田 敬史 氏中小企業における環境マネジメントシステムに関する課題を抽出し、中小企業の普及支援策とその有効性や、地方での取り組み、代替EMSの評価と課題などについて議論した内容を紹介。
これらの議論を通じて、有効な環境マネジメントシステムが構築されれば、環境パフォーマンス向上が期待されるとの見解が出された。最後に、適合性評価制度改善のためには、中小企業のEMS経験者を審査員に登用する道を拡大し、代替審査のための条件整備が必要であるなどのいくつかの提言が示された。 - JAB/ISO 14001研究会報告 WG2
ISO 14001の効果的活用法と審査のあり方 -環境パフォーマンスを改善し、社会の信頼に応えるために- 市川 昌彦 氏組織・認証機関・審査員・JAB等の側面から過去10年を振り返り、規格上・規格解釈上・審査上の問題点などについて議論した内容を紹介した。議論では、環境パフォーマンスについての認識の定着不足、認証機関間でのミスマッチなどがあるとの指摘が出された。また、組織によって環境パフォーマンスを上げ、リスク回避するようなEMSが実施され、それが審査によって実証されることでEMSに対する社会の信頼が得られるとの意見もあった。これからの10年に向けては、環境パフォーマンス改善に寄与するEMS、経営パフォーマンス改善に寄与するEMSなど、EMS構築と審査の目指すべき方向について期待する、とまとめられた。
- JAB/ISO 14001研究会報告 WG3
設計段階から環境負荷を配慮した製品を実現するために 古賀 剛志 氏環境適合設計をマネジメントシステムに取り込むための課題と展望、設計から考えた製品実現の方法などについて検討した内容について報告があった。 EMSを再認識したうえで、「信頼される制度への深化」「EMSとQMSの両立」「社会への働きかけ」を議論の柱に設定。国際的に信頼されている客観的な審査登録制度としての知見を基礎に、環境適合設計の視点強化、製品に関する著しい環境側面に焦点をあてた審査などの必要性を述べた。また、 10年間のEMSの取り組みから学んだ経験から、経営者のコミットメント・経営の道具としての活用・本業での組織的な取り組みが活用できるのではないか、との意見が示された。
これらの講演ののち、プログラムの最後に、今大会のメインテーマである「今までの10年、これからの10年」についてパネルディスカッションを行いました。
※なお、2006年11月に実施したJABシンポジウムにおいて、討議の材料として「環境マネジメントシステム運用状況調査報告書 -今までの10年、これからの10年-」(PDF 303KB)を活用いたしました。報告書の内容につきましては、こちらをご覧ください。
