第13回 JAB/ISO 9001公開討論会 報告(概要)

2007年 5月21日
財団法人 日本適合性認定協会

2007年 3月12日、本協会主催による第13回JAB/ISO 9001公開討論会が、東京ビッグサイト国際会議場(東京都江東区)において、約750名の参加者を迎えて開催されました。

今年度メインテーマは「ISOを楽しむ」

ISO 9001に基づく品質マネジメントシステムが組織の経営者の積極的な関与を得て、組織の目的に大きく貢献することが可能となれば、“組織全体でISOを楽しめる”ことを伝えました。

「ISOを楽しむ」ためのシナリオとは

ISO 9001を使いプロセスを標準化すれば、その仕事が静々粛々と進み、楽しい職場となる【基盤構築】。それらを極めることで新技術開発や新製品開発への応用・活用が可能になり、レベルアップを実感でき、仕事にやり甲斐感を持つことができる【技術能力向上】。そして、経営者(トップ)のニーズを的確に捉えて ISO 9001を活用し、トップの掲げる組織の目的を達成できることを示すことで、トップの積極的な関与が得られる【トップを動かす】。このシナリオを通して、「ISO は楽しく使うもの」であることを伝えていきました。

 

基調講演「ISOを楽しむ」
東京大学 飯塚 悦功 教授

「ISOを楽しむ」とは、ISO 9001の意義を実感し、有効活用による達成感を得ることであり、本討論会は組織がISO 9001有効活用のヒントを得られる場としたい、と冒頭に述べられました。そのためには経営目的や経営課題の理解、道具としてのISO 9001の特徴・本質の理解が重要であるとの解説がありました。また、品質の良い製品・サービスを効率的に提供するには、組織基盤を構築したうえで、固有技術と管理技術を合わせた技術能力を向上させることが重要であり、これらを攻めの経営に生かしていくことで、トップの経営ニーズが達成できると解説しました。
トップのニーズを達成させるための各ステップについて、ISO 9001研究会メンバーより研究報告がありました。以下はその発表内容です。

WG1 基盤構築
発表者:筑波大学 山田 秀 氏

冒頭に「基盤」とは、組織が市場で生き残れるために必要な業務基盤と定義するとの説明がありました。組織の目的達成のために必要な(1)認識・価値観 (2)固有技術 (3)プロセス (4)経営資源 (5)管理技術 の集まりであり、各要素相互のバランスが重要であると述べられました。基盤構築がされていれば製品・サービスが安定的に提供されるメリットがあり、基盤構築がされていなかったことによる事例と問題点、基盤構築のためのステップなどの詳細解説がありました。最後に、基盤は一度構築して終わるものではなく、日々の継続的改善を通して基盤に厚みを持たせ、組織の技術能力向上に役立てて欲しいと締めくくり、WG2へ繋ぎました。

WG2 技術能力向上
発表者:ソニー株式会社 河東 肇 氏

WG2では最近の品質事故・トラブルの事例を取り上げ「技術能力向上とは」「技術能力向上のための具体的取り組み」を議論したことを紹介。品質トラブルの大半は管理不良によるものであり、管理技術の視点から是正処置をすることで管理能力の向上が期待できると述べられました。また、品質事故・トラブルついては計画・構想・設計段階から未然防止を求められることから、再発防止から未然防止・未然防止のあるべき姿・有効に未然防止を行うための方法・有効な未然防止の事例などについて説明がありました。最後に、未然防止から固有技術へのレベルアップと、未知の不具合を固有技術のレベルアップができる事例を紹介し、組織の強みへ繋がる可能性を示しました。

WG3 トップを動かす
発表者:岡谷電機産業株式会社 斉藤 忠 氏

本討論会で毎年組織の課題として挙がる「トップのモチベーションをアップするには」について検討した内容を報告。はじめにトップが動かない理由とトップのニーズを分析。トップニーズへ対応する体制構築のためにはまず、「基盤構築(WG1)」のプロセスを使ってベースを築き、次に競争優位に立つための武器として「技術能力向上(WG2)」を役立てることができると提言。トップのニーズの「勘所」を把握し、組織の推進者自身がマネジメントツールとしてのISO 9001の本質を理解し、実務と融合させて使い込んでゆけば、自ずとトップは動くのではないか、との意見が示されました。最後に、トップのニーズを認識したうえでそれを達成することができれば、推進者自身の自己実現になるだけでなく、トップ・推進者・認証機関など関係者全てが「ISOを楽しむ」ことができるのではないか、と締めくくりました。

午後は、WG発表3名の方々及びISO 9001研究会メンバーから イオン株式会社 足立 憲昭 氏、中央大学 中條 武志 氏、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 住本 守 氏、本協会システム認定部長 久保 真が加わり、飯塚教授をコーディネーターとしたパネルディスカッションが、会場からの質問に答え、議論を交わす方式で進行されました。

参加者の皆様には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

 

会場の風景

 

以上

 

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