2007年度JAB環境ISO大会 開催報告(概要)
2008年 2月28日
財団法人 日本適合性認定協会
本協会は2008年 2月15日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールにて、「JAB環境ISO大会」を開催致しました。今年度は「持続可能な社会の実現に向けて -環境ISOの役割-」をメインテーマに設定しました。
本テーマ設定に際しては、昨年度の大会で発表した「環境ISO ビジョン2015・実現のための5つの提言」[EMS 審査登録制度10周年における制度の普及状況に関するレビューと今後の課題抽出報告書 :2007-04-17](PDF 1.43MB)が背景にありました。環境ISOのこれからの10年のゴールとなる2015年に到達すべき姿を示したものですが、今年度はさらに具体的な活動目標についてJAB/ISO 14001研究会で討議し、その結果を本大会で報告いたしました。
冒頭、本協会専務理事・事務局長 井口新一が、今年度テーマの説明と、マネジメントシステム認証審査のあり方や認証制度の信頼性について、認定機関としての見解を述べました。本協会が 2007年 4月に発表した「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」やIAF(国際認定機関フォーラム)にて提言されたOutcomes Matter / Expected outcome の考え方を紹介し、パフォーマンス・アウトプットから遡った審査をすることでマネジメントシステムの有効性が確認でき、制度の信頼性も確立されるとのメッセージを発信しました。
続いて、特別講演及び「JAB/ISO 14001研究会」の研究成果の発表がありました。概要は以下のとおりです。
- 特別講演 1 「地球温暖化対策とISO 14001 -認証制度への期待-」
経済産業省 大臣官房審議官 基準認証担当 廣田 恭一氏
地球温暖化対策とISO 14001認証制度の現状について述べられた。CO2排出抑制の為の活動は認証件数の伸びとともに増加しているが、中小企業の普及と認証に関する社会からの評価が今後の課題となっている旨の説明があった。ISO 14001の普及、環境負荷の低減の為には、認証制度が社会に広く正しく理解されることが必要であり、国のガイドラインの策定を検討することを含め、認定機関、認証機関と連携した取組みを進めていくとの方向性が示された。 - 特別講演 2 「21世紀環境立国戦略と環境行政の課題
環境省 大臣官房審議官 総合環境政策局担当 石野 耕也氏
地球環境の危機について、温暖化を中心にいくつかの実例が示された。持続可能な社会に向け実現のためには、国民による統合的な環境活動を全国的に展開していく必要があると述べた。さらに、日本が国際的リーダーシップをとり、「環境立国・日本」から世界に向けて発信していくとの今後の展望が示された。また、今年行われるG8北海道洞爺湖サミットをはじめ国際会議の動きや、持続可能な社会に向けた環境省の様々な取組みについて紹介があった。
続いて、JAB/ISO 14001研究会メンバーより各WGの研究成果が発表されました。本研究会は各ステークホルダーにて構成され、3つのWGが2007年夏から研究活動を開始し、数か月間をかけて議論を展開しました。
- JAB/ISO 14001研究会報告 WG1
「環境パフォーマンス向上のための環境コミュニティの役割」 倉光 豊氏
2006年度では、EMS構築と審査の目指すべき方向として、環境パフォーマンス改善に寄与するEMS、経営パフォーマンス改善に寄与するEMSなどに期待が示された。これを受けて今年度は、環境コミュニティを形成することで環境パフォーマンス向上が図れる可能性があることを、事例紹介を交えながら検証した。環境コミュニティは (1)範囲の経済性を高める効果 (2)社会化を向上させる効果 (3)規模の経済性を高める効果 があり、組織のもつ阻害要因を乗り越え結果として地域も含めた環境行動を可能にし、環境パフォーマンス向上が期待できると解説。地域特性に限定されず、どのような地域でも活用ができるであろうと述べられた。 - JAB/ISO 14001研究会報告 WG2
「EMSの普及促進のために」 伊藤 佳世氏
2006年度のWG1で検討された中小企業の普及支援のために示された提言をベースに、今年度はさらに具体的な実現策を検討した結果を報告。普及へのボトルネックは、組織自身がEMSにメリットを見いだせないこと/コストや労力がかかる/用語や運用方法が分かり難いこと、等であると分析。これらの対策として、(1)中小企業に対するEMS普及促進については、EMSの理解推進を目的とした「EMS研究会(仮称)」を提案 (2)EMS認証制度に共通する評価・課題については、EMS認証制度に関する人との情報交流及び共通点の理解促進を目的とした「EMS認証団体交流会 (仮称)」が新たに提案された。今後の運営方法に向けて、さらに検討を続けていくと述べた。 - JAB/ISO 14001研究会報告 WG3
「マネジメントシステムの統合に向けて -4者への提言-」 國富 佳夫氏
2006年度のWG3において、製品環境問題に確実に対応するためにはEMSとQMSの一体化した運用が不可欠であると報告された内容を受け、今年度は統合マネジメントシステム実現に向けて、関係者がどのような視点で活動するべきか検討した内容を報告。WGでは審査に対する期待度と充足度がマイナス相関になっている点に着目し議論が展開されたことが紹介され、EMSとQMSの協調に向けて、経営システムとマネジメントシステムの一体化/情報公開/審査員と審査の力量の明確化などが重要なキーワードとして抽出されたとの解説があった。最後に、(1)コンサルタント・機関への提言 (2)受審組織への提言 (3)審査員・認証機関への提言 (4)認定機関・IAFへの提言、をそれぞれ行った。
これらの講演ののち、プログラムの最後に、今大会のメインテーマである「持続可能な社会の実現に向けて -環境ISOの役割-」についてパネルディスカッションを行いました。最後に、本大会の全体主査である吉澤 正氏より、パネルディスカッションを総括した講演がありました。
- パネルディスカッションの総括
「持続可能な社会の実現に向けて -環境ISOの役割-」 吉澤 正氏
改めて2006年度の環境ISO10周年記念大会での提言を振り返りながら、今年度の各WG活動の成果をレビュー。これに加えて、環境マネジメントシステムの基礎はISO 14001である / 組織活動報告における環境マネジメントの存在がやや埋もれている傾向にある など、認識しておくべき現状についての紹介があった。最後に、環境ISOの普及促進を図りながら、制度自身も改革していく必要があると締めくくった。

■本件に関する問合せ先■ 財団法人 日本適合性認定協会 総務部 CS E-mail: CS@jab.or.jp Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780