組織不祥事への認定・認証機関の対応について(組織不祥事対応検討会 報告書)

2008年 3月14日
財団法人 日本適合性認定協会

近年、JIS Q 9001(ISO 9001)やJIS Q 14001(ISO 14001)などのマネジメントシステム(MS)の認証を受けた組織が社会の信頼を損なわせるような不祥事を起こす事例が増加しています。

こうした状況にあって、第三者認定・認証制度に対する一貫した信頼性確保の重要性に鑑み、本協会は、組織不祥事に対して認定機関と認証機関とが整合性のとれた処置を適時、適切に行うため、審査登録機関協議会(JACB)の協力のもと、次の課題について2007年 2月より共同検討を進めてまいりました。
 

  1. MS認証機関の組織不祥事対応プロセス
  2. 組織不祥事に対する情報公開・公表への対応
  3. 組織不祥事を通じて得られた審査教訓の水平展開
  4. 談合問題

 

このほど、この検討結果を報告書として取りまとめましたので、添付のとおり公表いたします。なお、検討結果の概要は、下記のとおりです。

 

  1. MS認証機関の組織不祥事対応プロセス

    本検討では、組織不祥事発生以降のMS認証機関による具体的処置、当該処置などにかかわる情報公開の時期を含む、認証機関による組織不祥事対応プロセスについて検討を行った。

    認証された組織で不祥事が発生した後、その事実及びMS認証との関連確認や組織との情報公開方針の合意などを目的とした初動調査から、当該事案の解決までの対応プロセスを整理し、フロー図として取りまとめた。

    フロー図では、MS認証機関への要求事項を規定したJIS Q 17021(ISO/IEC 17021)に基づいた処置根拠の明確化を図るとともに、情報公開時期を特定している。また、組織不祥事対応は、苦情処理の考え方をもって取り扱うことが妥当であることを確認した。

  2. 組織不祥事に対する情報公開・公表への対応

    本検討では、本制度の信頼性確保の方策の一つとして、社会への説明責任を果たす観点から、不祥事発生後の情報発信のあり方について検討した。具体的には、事案発生後、テレビ、一般紙などを通じて全国規模で報道されているものを対象として、上記1.のフロー図で特定された情報公開時期において、どのような情報を公開・公表すべきか、過去の具体的事例も踏まえ、公開情報モデルの整理を行った。

    また、こうした情報公開を円滑に進めるため、予め認証機関と組織との間でその方針を審査契約で明確にすることが必要であることを確認した。

  3. 組織不祥事を通じて得られた審査教訓の水平展開

    本検討では、組織不祥事への対応として、事案調査などを踏まえ当該組織の認証規格への適合性評価を確実に行うことに加えて、「認証審査に問題はなかったか」、「今後の認定・認証審査のあり方に反映すべき教訓は何か」といった視点で検討し、必要な改善と水平展開を進めることの重要性を認識し、これについて検討を行った。

    認証機関は、組織不祥事の事案調査などの結果を踏まえ、自ら行った認証審査において見逃した当該機関のシステムの問題がどこにあったか、という視点から分析を行い、その結果、不十分な点が特定された場合は、再発防止に向けて必要な改善を速やかに実施することが求められる。また、分析の結果、制度全体として考慮・対処すべき組織の業種・業態に共通する問題などが特定された場合は、認定機関に対してその旨提起することが望まれる。

    一方、認定機関は、認証機関の審査のあり方へのフィードバックが的確になされていたかの確認を行う。また、自身の情報収集から把握又は認証機関から提起された制度全体として対応すべき課題について、認証機関に対して当面必要な対応策を発信するとともに、継続的に問題や教訓の蓄積に努め、認定・認証審査の進め方や制度の改善を進めていくことが必要であることを確認した。

  4. 談合問題

    本検討では、新聞紙上に見られる環境装置、橋梁、地下鉄などの公共工事に於ける談合問題が多発化する最近の状況などを踏まえて、談合問題への認定・認証機関の対応について議論を行った。

    しかし、一方で四囲の動向を整理した結果、相次ぐ談合問題に対して、規制当局からは、法的要求事項の強化とその厳格な適用姿勢が社会にも示されており、また、当事者である組織のレベルにおいても、定款の変更という形で、従来見られなかった踏み込んだ具体的行動を示す組織が現れている。

    このように事態の改善が進みつつあるとの認識から、時間を要するこの議論は一先ず置いて、改善の成り行きを期待を込めて見守ることとし、必要ならよりフォーカスした次なる対応を検討することとした。

本検討会の活動により、組織不祥事が発生した事後の認定・認証機関の対応については一定の成果を得たが、不祥事事例から得られる経験を、本認定・認証制度全体で共有し水平展開を行う枠組みの構築など、社会から一貫した信頼性を確保するための、運用、改善などにかかわる具体的方策については、十分な議論が尽くされず課題として残された。

これらは、組織不祥事対応というより、本制度の信頼性の更なる向上という観点から捉えるべきと考え、今後の課題として、適時に検討、必要な対応を行うこととした。

公表文書
 

 

以上
■本件に関する問合せ先■
財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail: CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780

認定センター
E-mail: SYS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1214 Fax.03-5475-2780

 

ページの先頭へ戻る