第14回 JAB/ISO 9001公開討論会 報告(概要)
2008年 5月16日
財団法人 日本適合性認定協会
2008年 3月17日、本協会主催による第14回JAB/ISO 9001公開討論会が、東京ビッグサイト国際会議場(東京都江東区)において、約800名の参加者を迎えて開催されました。
メインテーマ「ISO 9001認証を考える」設定の背景
ISO 9001認証制度が発足して約15年が経過し、本制度を有効に活用している組織が多数ある一方、さまざまな課題や問題点も指摘されています。本制度が製品・サービスの最終顧客・使用者にとって意味があるのか、制度の信頼性は保たれているのか、等があげられます。また、制度に対する社会の目は、非常に厳しくなっています。こうした背景のもと、今年度のメインテーマを「ISO 9001認証を考える」と設定し、公開討論会の場で意見交換しようと計画しました。
基調講演「ISO 9001認証を考える」
東京大学 飯塚 悦功 教授
はじめに、ISO 9001認証制度のフレームワーク、制度設計の過程でなされた制度の理念や本質についての検討内容、制度が広まった要因などの解説がありました。加えて今回のメインテーマを考察するために必要な認識合わせのために、制度の対象者と目的などの基本的部分を確認しました。認証制度の顧客とは社会の構成メンバーであり、良い審査とは審査対象組織が規格の要求事項を満たしているかどうかを的確に判断する審査でなければならないが、現在の認証制度のビジネスモデルは質の良い審査をする認証機関が発展するような制度運営構造になっていない点を指摘。
審査の質向上の原動力として、情報公開と認証機関の見識が必要であると述べ、WG1テーマ「信頼されるISO 9001認証制度」へ引き継ぎました。
以下は、ISO 9001研究会メンバーによる研究報告です。
WG1 信頼されるISO 9001認証制度
発表者:財団法人 日本規格協会 マネジメントシステム 審査員評価登録センター 加藤 芳幸 氏
はじめに、現状の制度は、本来の意味での「第三者認証制度」なのか、との問題提起がありました。本来の意味では、第三者による認証結果を利用することによって、供給者選択の効率化を図るとともに、認証された組織が提供する製品・サービスにより社会に安全・安心を提供する制度であるが、現状は関係者によって多様な価値をもち、それゆえ問題が生じていると指摘。この問題を解決し、信頼される第三者認証制度とするための提言として、①認定審査結果・認証審査結果に関わる情報の公開②認証組織による製品品質情報の開示と、購入者による製品品質情報のフィードバックが必要であると述べました。
WG2 サプライチェーンにおけるISO 9001認証の活用
発表者:イオン株式会社 足立 憲昭 氏
企業間の良質で効率的な取引のために、ISO 9001認証にどのような効用と活用の仕方があるかについて、食品スーパーと建築業の事例を示して具体的に紹介。顧客要求事項を明確にすることで、精度の高い見積もりが期待できる・設計開発の変更による不具合の発生を防止できることで、購入者が当該組織を発注先として選定する際の候補となり得ることや、購入者と供給者が健全な関係を維持することで両者がwin-winの関係になると解説しました。最後に、サプライチェーン全体として第三者審査を利活用することで、自社の資源をコア事業に集中でき、差別化できるであろうとの提言がありました。
WG3 組織にとってのISO 9001認証の価値
発表者:ソニー株式会社 河東 肇 氏
ISO 9001適用組織の視点で認証の意味・意義・価値を分析・整理し、これらの価値を活かすためにどのようにすべきかを、事例を通して考察した結果を報告。認証の価値を活かすには、能力証明を活用する方法と審査プロセスを活用する方法があると解説しました。WGではこの2つの切り口から現状起きている問題・課題を抽出。能力証明として社会が求めていることと認証組織の実態に乖離が生じており、能力証明のステータスが薄れている点を指摘しました。これに対する提言として、組織側は能力証明に相応しい組織実態を確立し、制度運営側は審査を厳格化・透明化し、審査員の力量確保と認証機関の能力が分かる情報提供を行うべきであると述べました。
午後は、WG発表3名の方々及びISO 9001研究会メンバーから 岡谷電機産業株式会社 斉藤 忠氏、みずほ情報総研株式会社 大滝 安宏氏、本協会認定センター 亀山 嘉和が加わり、飯塚教授をコーディネーターとしたパネルディスカッションが、会場からの質問に答え、議論を交わす方式で進行されました。
参加者の皆様には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
