2008年度JAB環境ISO大会 開催報告(概要)

2009年 3月 2日
財団法人 日本適合性認定協会 

本協会は2009年2月19日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールにて、「JAB環境ISO大会」を開催致しました。 今年度は「環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて」をメインテーマに設定しました。

前年度大会に引き続き、「環境ISOビジョン2015・実現のための5つの提言」[EMS審査登録制度10周年における制度の普及状況に関するレビューと今後の課題抽出報告書 :2007-04-17](PDF 1.43MB)を実現するための具体的な活動について、検討を行った結果を報告しました。

冒頭、本協会専務理事・事務局長 井口新一より、2006年度に掲げた「環境ISOビジョン2015・実現のための5つの提言」実現への進捗状況概要を報告しました。提言のうち「広範囲な EMS関係者の交流の対話の場づくり」については、EMS交流会(仮称)が設立準備に向けて動いていることを説明し、将来への期待を述べました。また、「環境ISOの有効性の見える化」については、今年度のメインテーマに選定され、議論を行ったことを紹介しました。最後に、環境ISOビジョン2015の達成をめざし、世界をリードする日本のEMS認定・認証制度の確立を進めていこうとのメッセージを発信しました。

続いて、組織における環境経営の実践と環境ISOの果たす役割と期待について、基調講演がありました。

 

    • 基調講演 「環境経営の実践とISOへの期待-低炭素経営を取り巻く話題-」
      株式会社 三菱総合研究所 環境・エネルギー研究本部長 主席研究員 伊藤 一道 氏

       

      経営方針に環境活動を取り入れる「環境経営」に取り組む組織は増加しつつあるが、行き詰まり感や効果への疑問も現れている。これに対し、低炭素経営を具体的に考えることで、環境経営の一つのあり方が見えてくるとの考察を展開した。国内外のCO2排出権取引制度の最新情報を交えながら、企業における低炭素経営の方向性を示し、今後の社会に起こりうるリスクとビジネスチャンスを分析。近年の社会のキーワード「測る、見える化(公表)する、それを第三者が評価する」ことが低炭素社会、環境経営のポイントであり、ISOが地球益をもたらす重要ツールとなりうるという期待を示し、締めくくった。

次に、午後に予定している組織事例報告に先立ち、会場の共通認識を得るため、事例の着眼点について解説を行いました。
 
    • 「事例の着眼点・解説」
      筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授 西尾 チヅル 氏

       

      冒頭で、今回検討テーマの基礎情報として、環境保全型社会を推進するためのアプローチを示し、顧客満足と社会利益と組織利益の調和が重要であることを説明。環境ISOが、環境保全と企業経営にどのように有効であるか、より有効に活用するために必要な対応が何かを探るため、組織における環境経営に対する環境ISO認証制度の役割と、その活用実態を事例に基づいて検討したことを述べた。事例1の着眼点:高い環境パフォーマンスと消費者の価値観・ライフスタイルを環境保全型に変革した原動力となっている、パナソニック社の環境経営・組織運営のメカニズム事例2の着眼点:環境ISOの仕組みを積極的に活用することにより、より環境パフォーマンスの高いエコプロダクトを開発・販売する体制を構築・拡大している点と、それを支える質の高い内部監査体制の構築と実施

    • 組織による事例報告 1
      パナソニック株式会社 環境本部 環境渉外担当顧問 菅野 伸和 氏

       

      同社は経営理念と環境経営を一体化させ、持続可能な社会の実現を目指しており、「グリーンプラン2010」や「エコアイデア宣言」などの様々な取り組みが紹介された。また、CO2削減のための施策、グリーンプロダクツ体系の構築など積極的に環境保全活動を行い、また環境情報の開示によって環境コミュニケーションを図ることで、消費者の環境意識を高めていることも説明。これら環境パフォーマンスの向上にISO 14001が役立っていると認識している一方、環境経営の推進と環境ISOの運用には、スピード感・目標設定・基本姿勢などの点で一体感が薄れつつあるとの課題が示された。しかし、今後システムを更に進化させ、環境ISOの役割を積極的に社会に訴求していくことで、ギャップが解消されていくであろう、と述べた。

    • 組織による事例報告 2
      株式会社 ブリヂストン 環境推進本部 環境推進部
      環境管理ユニットリーダー 石川 伸次氏、環境管理ユニット 栂野 龍彦 氏

       

      環境は「経営の最重要課題の一つ」と位置付け、新たに活動展開を開始した「環境経営活動」について報告があった。基盤となるEMSと環境コミュニケーション、柱となる事業運営環境・製品環境・エコプロジェクトの取り組み内容や、独自のグローバル統一環境経営システム「TEAMS」を説明。続いて、同社の特徴である全社統合EMS活動の改善事例を紹介し、外部監査による改善例と質の高い内部監査体制によって、環境ISOの仕組みが有効に活用されていると述べた。今後は、内部監査のさらなる継続的改善を進め、EMSの有効活用を高めたいと述べた。

プログラム後半は、今大会のメインテーマである「環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて」について、パネルディスカッションを行いました。最後に、西尾チヅル氏より、パネルディスカッションを総括した講演がありました。
    • パネルディスカッションの総括
      「環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて」西尾 チヅル 氏

      基調講演、2つの組織活動の事例報告、ディスカッションを通して、「環境ISO活動の見える化」へのポイントは何かを抽出。

      1. 環境ISOは、環境パフォーマンスを向上させるために、マネジメントシステムの仕組み自身を変革したり、システムの存在を組織外部(ステークホルダー)に示す上で有効な手段である
      2. 統合認証、グローバル展開、サプライヤーへの環境ISOの導入などによって、関連する市場全体の環境パフォーマンスが向上し、環境保全型社会の構築を促進する
      3. 報告組織の事例を参考に、形骸化させない仕組み・EMSの成果を確認できる仕組みを構築することが見える化の鍵である
      これらがヒントとして示された。

       

来年度は、今年度の検討結果をもとに「見える化」をより具体的に示していく予定です。

2008年度JAB環境ISO大会の模様

 

以上

 

■本件に関する問合せ先■
財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail: CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780

 

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