第15回 JAB/ISO 9001公開討論会 報告(概要)
2009年 4月14日
財団法人 日本適合性認定協会
2009年 3月16日、本協会主催による第15回JAB/ISO 9001公開討論会が、東京ビッグサイト国際会議場(東京都江東区)において、約700名の参加者を迎えて開催されました。
メインテーマ「審査を変える~QMS認証の価値向上~」設定の背景
昨年度JAB/ISO 9001研究会が検討した「ISO 9001認証を考える」の内容を引き継ぎ、今年度は焦点を絞って検討しました。認証制度における審査に焦点を当て、QMS認証の価値向上のために本制度はどうあるべきかを約10ヶ月にわたり検討を続け、その研究成果を報告・意見交換することといたしました。
基調講演「審査を変える~QMS認証の価値向上~」
東京大学大学院 工学系研究科 特任教授
飯塚 悦功 氏
冒頭に、ISO 9001認証制度の本質である「QMS認証制度」と「QMSモデル」の2つについて解説がありました。制度の狙いを明らかにしたうえで、制度の脆弱性や各ステークホルダーの期待の実態を分析。第三者認証制度のビジネスモデルは、質の良い審査をする認証機関が発展する制度運営構造になっていない点と、組織は審査料金に見合った審査を求めている点などが指摘されました。組織は、製品品質を確保できるQMS・優れたQMS・競争力のあるQMSを期待しており、一方社会は公正で不祥事を起こさない組織・良い/強い組織・ミスをしない組織を期待していると述べ、これらを現状の審査の枠内でどこまで克服できるかを今年度の研究会で検討したことが紹介されました。
以下は、ISO 9001研究会メンバーによる研究報告です。
WG1 QMSの有効性をみる~ISO 9001逐条審査からの脱却~
発表者:早稲田大学 理工学術院 教授
棟近 雅彦 氏
WG1では、有効性審査とは、"QMSの有効性"を検証するためアウトプットに着目し、"結果"または"実施された程度(パフォーマンス)"が目標または期待された結果を生み出すようになっているかどうかを判定すること、との認識のもと、議論を開始したことを紹介。有効性審査は、ISO 9001に適合しているかどうかをみる適合性審査に含まれるという考えを基盤に、組織のマネジメントシステムの有効性を見るにはどうしたらよいか、どのように不適合を指摘できるかを検討しました。有効性審査のポイントとしてアウトプットとその目標の確認・トップの意図との関係把握・活動のパフォーマンスを見る・目標の達成だけが重要ではないことなどを挙げ、対応する方法例と具体的な事例が示されました。
WG2 社会・組織の期待に応える審査~現行制度の枠内でどこまで可能か~
発表者:財団法人 日本規格協会 名古屋支部 事務局長
加藤 芳幸 氏
ISO 9001認証制度発足以来、15年の運用の結果、この制度の目的である「QMSの活用により良質製品を継続的に提供できるという品質保証能力の証明制度」 (能力証明制度)が提供する価値のみでは、組織及び市場からの期待に応えきれなくなってきているとの議論があったことを紹介。それを踏まえて、「ISO 9001認証制度の枠組みを超えることなく制度設計時の目的を超えた期待に対する価値を提供することはどこまで可能か」また「そのためには審査の基本的な姿勢をどのように変えなければならないか」について一つの考え方が示されました。また、WG2の課題提起を出発点として、期待に応えるための審査の具現化のために関係者による検討の場が設置されることが提言されました。
WG3 組織からみた価値ある審査~審査の活用と期待~
発表者:株式会社 山櫻 ロジスティック管理部長 兼 物流改革推進室長
友野 猛雄 氏
組織がISO 9001に期待する価値と現実には一部ギャップがあり、形式的な運用・取り組みのマンネリ化・内部監査が機能していないなど、有益な取り組みとなっていない場合があることを紹介。組織の期待を実現し、認証の価値を得るための方策として「有効性審査の厳格化」が提案されました。QMSの有効性を確実に評価するためには、組織はありのままの姿を見せ、認証機関は計画された活動との差を厳格に審査することで、価値ある審査となるとの意見を提示。有効性審査の厳格化を実現するために、審査側・受審側のそれぞれあるべき姿について提言を行い、最終的に組織は、経営改善に繋げる仕組みとしていきたいと締めくくりました。
午後は、WG発表3名の方々及びISO 9001研究会メンバーから 財団法人 日本規格協会森住 光男氏、株式会社 アドバンスド・アイソ・マネジメント 武田 昌彦氏、インクリメントP株式会社 古泉 功氏、本協会認定センター長 久保 真が加わり、飯塚教授をコーディネーターとしたパネルディスカッションを行いました。今年度は、公開討論会開催約1ヶ月前からJABウエブサイトに資料を掲載し、質問・コメントを募集しました。パネルディスカッションはこれらの質問に答え、会場と議論を交わす方式で進行しました。
当日使用したテキスト及び事前に寄せられた質問項目とそれに対する回答は、以下の資料をご覧願います。
資料
- 基調講演(PDF 332KB)
- WG1資料(PDF 239KB)
- WG2資料(PDF 335KB)
- WG3資料(PDF 410KB)
- 第15回JAB/ISO 9001公開討論会 事前質問票 & 回答(PDF 144KB)
参加者の皆様には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

■本件に関する問合せ先■ 財団法人 日本適合性認定協会 総務部 CS E-mail: CS@jab.or.jp Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780