2009年度JAB環境ISO大会 開催報告(概要)

2010年 4月 7日
財団法人 日本適合性認定協会

本協会は2010年 2月23日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールにて、「JAB環境ISO大会」を開催致しました。
今年度は「環境ISOの有効活用と活動の見える化-事例研究-」をテーマに設定しました。今回のテーマは2006年度に掲げた「環境ISOビジョン2015・実現のための5つの提言(PDF 1.43MB)」[2007-04-17]に基づくもので、昨年度のテーマ「環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて」をさらに深化させて議論を行なったものです。

冒頭に、本協会専務理事・事務局長 井口新一より、本協会の今後の活動について意思表明をいたしました。
ISO事務局が公表している統計データをもとに、現在、日本のISO 14001認証取得状況は世界のトップレベルにあることを紹介。日本の環境ISOの活動が世界をリードし、そのまま環境ISOのモデルになり得る可能性を示しました。そのためには、日本の活動内容や審査方法、結果などを社会一般に広く情報公開し、世界のモデルにすることを意識した活動を積極的に行うことが重要であり、今後は、今まで以上の力を注いで市場、社会一般のISO 14001への理解をさらに深めていきたい、と述べました。

続いて、消費生活にとって認証制度の意義とは何か、について基調講演がありました。

    • 基調講演「消費者の視点から認証制度の信頼を考える」
      主婦連合会 事務局長 佐野 真理子 氏

      認証制度の信頼性の確保、消費生活への定着について、消費者の目線から講演いただきました。環境ISO認証制度は本来、消費者と組織ともに利点が享受できるはずだが、現状は制度の実効性が薄れていると指摘。その最大の理由として、マネジメントシステム運用の成果に至る過程が見えにくいことを挙げ、認証取得以降の事業活動の透明性や活動について、実践する組織側からの丁寧な説明が必要である、と提言。環境ISOの実効性に確信が持てれば、消費者は自己の選択が確かであったことを実感でき、消費者への信頼感付与が組織側には手ごたえとなるであろうとのご意見でした。また、説明に際しては、認証機関・認定機関も交えた双方向のコミュニケーションが不可欠であり、そのスタートは消費者からの相談・質問・苦情への対応から始まると述べ、制度関係者各々は、真摯で地道に、制度を普及させるための「見える化」を図る必要がある、とのご提言をいただきました。

次に、午後の演題として予定されている「ケーススタディ報告」に先立ち、会場の共通認識を得るため、昨年度討議のレビューと事例の着眼点について解説を行いました。

    • 「昨年度討議のレビューと事例の着眼点・解説」
      筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授 西尾 チヅル 氏

      昨年度、事例で紹介した2組織の環境経営に対する環境ISO認証制度の役割と、その活用実態を振り返り、抽出された「見える化」のヒントと課題を確認。今年度はさらに6組織の活動事例を取り上げ、(1)環境ISOの効果が発揮できているか(2)社会を含めた組織内外への「見える化」の方法とは何か、について議論したことを紹介いただきました。昨年度の成果を軸に展開されたこの議論の中で、環境ISO活動の核に「見える化」に有効な思想やツールがあり、その中でも内部監査が重要な役割と効果があることを再認識したうえで、今回の議論を展開したことを説明しました。さらに、活動の見える化の手段と対象者について分析した内容も紹介いただきました。最後に、今回報告する2つのケーススタディについて、概要を報告しました。

      ケーススタディ1: 組織を取り巻く様々な変化に対応した環境ISOへの取り組み事例

      ケーススタディ2: 環境ISO導入歴10年以上の組織が、環境ISO活動を形骸化することなく発展させた事例

続いて、6組織の活動事例について、特徴別に2つのケーススタディに分類して紹介しました。

    • ケーススタディ1 「様々な局面での見える化への取り組み」
      株式会社 品質保証総合研究所 セミナー開発部長 原田 充裕 氏

      3つの組織は組織構成員数が200~300人の中堅組織という点で共通。

      事例1:
      これまでの維持目的の認証を止め、「経営基盤向上」「環境ISOを経営管理の一部を担うものとする」「自社の実情にあったシステムの再構築」などを目指し、内部監査の改善をメインに見直しを図ったもの。結果として監査への問題意識が非常に高まり、責任者クラスの意識向上に変化が生まれ、コミュニケーションも改善されたこと、更には内部監査が内部へ対する典型的な見える化のツールであることが明確に示された事例として紹介いたしました。

      事例2:
      3組織合併に際し、各社の環境ISO取り組みに対する温度差を解消するため、「トップダウンを強化」「環境ISOの積極的活用するための戦略」「環境 ISOの役割を社内へ粘り強く啓蒙する」などを目標に掲げた。事務局機能はEMS/QMS共通とし、目標を集約化。内部監査については結果のみでなく議論のプロセスを記載し、内部への見える化を図り、外部対応ではISO事務局が一元的に扱うなど、業務とISO活動の一体化に取り組んでいることを紹介いたしました。

      事例3:
      最後に一般消費者向け製造業の事例が紹介され、「製品」「環境」「サービス」の3点を強調した中期計画推進の具体的内容について説明。外部の視点から、当該組織の見える化の取り組みは(1)社内での活動(2)エコ商品への反映(3)地域社会への貢献(4)教育現場への啓蒙・貢献 の4つに分類でき、様々な形での工夫がなされていること、今後は、企業経営にとって、これら活動によってどのような効果が得られたのか確認方法が確立されることに期待する、との意見を示されました。

    • ケーススタディ2 「経年的EMS導入がもたらす見える化の方向性」
      摂南大学 経営情報学部 准教授 山本 芳華 氏

      環境ISO導入後10年以上を経過した組織が、色あせることなく、自組織の個性に合わせた運用を行っている事例。また、いずれも直接的な環境負荷が少ない非製造業だが、様々な工夫を凝らしています。

      事例4: 「社外に目を向けたスパイラルアップ」
      社内イントラネットを活用し、プロジェクト毎に環境を含めた諸情報の共有化を図っています。本来業務に即した環境ISOを運用しているため、環境ISOのためだけの内部監査は存在せず、監査結果がそのまま次年度の目標に繋がる形となっています。また、社内標準として作成された環境配慮項目のフォーマットと環境ISOを共通項目とし、積極的に外部へ公開した結果、環境ISOの帳票の一部が業界へのスタンダードへと進化を遂げた。社内と社外の評価軸が一致することにより、モチベーションも向上し、社内活動のスパイラルアップをもたらしています。

      事例5: 「ビジネスベースの環境管理体制強化」
      オフィス活動に限定しがちな環境ISO活動を、自社に関わる相手方も含めて推進しています。まず社内全体に自社の環境影響評価を的確に理解させ、関連する外部組織に対する円滑な二者監査の実施基盤を構築。関連外部組織へ環境管理状況等を確認・把握し、取引先等決定のための重要な判断材料として活用しています。さらに、それら組織へ環境負荷軽減に向けた提言や要望を伝え、双方向の活発なコミュニケーションに繋げ、サプライチェーン全体の環境管理に活かしています。

      事例6: 「EMSとは人なり」
      入社後数年の若手に対し、環境ISOを通じて組織におけるマネジメントそのものの理解を促進するシステムを採用。次世代のマネジメントを担うことを念頭に、内部監査も若手で主体的に実施しています。のちの人事異動や転勤で巣立ったあとは、環境ISO活動もその先々で拡大していっています。当該組織では、環境ISO活動を土台とした製品開発を行い、研究所内活動やデータを必要に応じて地域住民に公開することで、良好な信頼関係を築いています。組織自身も地域の一住民であり、積極的な情報開示と環境意識を表明することで、社会的信頼を構築している例としてご紹介いただきました。

    • パネルディスカッション
      「環境ISOの有効活用と活動の見える化-事例研究-」

      プログラム後半は、今大会のメインテーマである「環境ISOの有効活用と活動の見える化-事例研究-」について、パネルディスカッションを行いました。

      パネルディスカッションのポイントは以下のとおり:
       

      1. 「組織の環境ISOと活動の見える化」のあり方とその方法
      2. 上記1を推進する上で、内部監査をどう活用するか
      3. 組織が期待している審査とは
      4. 審査結果を社会に公開することの意義と課題

       

      最後に、西尾チヅル氏より、パネルディスカッションの総括として、
       

      • 情報公開を積極的に進めることが制度信頼性向上における一つの方向性であり、その内容は、現状だけではなく、将来に向けての約束を示すことが求められている
      • 認証機関側には、組織のマネジメントシステムのレベルやパフォーマンスに応じた適切な審査がますます求められるであろう
      • 環境ISOはツールであり、もっと活用すべきであろう
      • 内部監査は、組織のマネジメントシステムの質向上に寄与するだけでなく、外部審査も変化させ、外部審査の質充実にも繋がる可能性を持っていることが今回の事例紹介で確認できた

       

      などを述べ、本大会を締めくくりました。

      以上

      2009年度JAB環境ISO大会

       
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     ■本件に関する問合せ先■
    財団法人 日本適合性認定協会
    総務部 CS
    Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780

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