2010年度 JAB 環境 ISO 大会 開催報告 (概要)

2011年 4月26日
公益財団法人 日本適合性認定協会 

本協会は 2011年 2月17日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールにて、「JAB 環境 ISO 大会」を開催致しました。 今年度は「情報開示-環境 ISO の信頼性向上のために」をテーマに設定しました。今回のテーマは 2006年度に掲げた「環境 ISO ビジョン 2015・実現のための5つの提言」[2006-00-00]に基づいています。3年間に亘って検討してきた「環境ISOの有効活用と活動の見える化」の集大成として位置づけ、認証制度の信頼性向上のための情報開示について、議論を行なった結果を報告いたしました。

冒頭に、本協会専務理事・事務局長 井口新一より、「環境 ISO ビジョン 2015・実現のための5つの提言」以降の本協会の活動状況を報告したあと、国内外の ISO 14001 認証取得最新状況や、JAB 実施のアンケート調査結果等の基礎情報を提供いたしました。これらのデータより、ISO 14001 運用に取り組んだ結果、システムや活動が環境パフォーマンスの改善に役立つと考えている組織は多いものの、関連したデータの開示があまり行われていないことが示されました。社会あるいは利害関係者からの社会的信用を獲得する環境づくりのためには、審査の範囲や、どのような手法で審査を実施したのかを分かり易く開示することが必要であり、本協会は引き続き情報開示の取り組みを推進していくことを述べました。

続いて経済産業省より、地球温暖化に影響を与えている温室効果ガスを「見える化」するために、現在進められているカーボンフットプリント制度試行事業について、特別講演をいただきました。

  1. 特別講演
    「「CO2 の見える化」に向けて~カーボンフットプリント制度試行事業の成果と今後の取組~」
    経済産業省 産業技術環境局 環境政策課 環境調和産業推進室長 村田 有 氏

    カーボンフットプリント制度とは、温室効果ガスの排出量を CO2 に換算して製品ごとに表示し、温室効果ガスを「見える化」する仕組みであり、現在試行中の事業であることを解説。制度の狙いと効果、世界各国の関心の高さと取り組み状況などの情報を交えながら、今後、グローバルサプライヤーの動向次第では、取引先から取得を求められるような環境規格になり得るとの可能性が示されました。今後は CO2 に限らずエネルギー使用量や水、大気汚染など様々な環境負荷を見える化する方向がより進むとの展望から、本制度は複合的な環境影響を可視化する一つのステップと考えらえる、と述べました。組織自身の組織力強化と、組織の強みを対外的にアピールするためにも、引き続き、多くの事業者に本事業への取り組みを喚起していくことが参加者に伝えられました。

    次に、研究会リーダーである西尾氏が、過去二年の議論を経て、今年度の JAB/ISO 14001 研究会が本テーマを選定した経緯を説明。午後から視点別に報告される「環境 ISO の情報開示の意義と課題」の理解を深めるための解説を行いました。

  2. JAB/ISO 14001 研究会の趣旨説明
    筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授 西尾 チヅル 氏

    初めに、昨年度・一昨年度での事例研究成果を紹介。1) 環境パフォーマンスの継続的改善に向けて PDCA サイクルを確実に回すことが環境 ISO の有効活用に他ならない 2) 環境 ISO を有効に活用している組織ほど、内部・外部に対し自組織のプロセスや成果を見える化できている 3) 見える化の手段・組織連携のためのコミュニケーション手段として環境 ISO を活用することで、組織に対する信頼性の醸成に繋がる、などが確認されたことを報告しました。これらの成果より、消費者や社会は、組織の活動結果だけではなく、むしろ活動の仕組みや結果に至るまでのプロセスの開示を求める方向にあるものの、ステークホルダーにより観点が異なることが現状であることが導きだされました。そこで、今年度は社会のニーズと情報開示の課題について、誰のために、どのような情報を開示することが制度や組織の信頼性向上のために必要か、各ステークホルダーはどのような開示を求めているのかを中心に議論を進めたことを述べました。

    続いて、「組織の目線」「消費者・社会の目線」「認証機関の目線」の3つの観点から、情報開示に関する研究報告がありました。

  3. 環境 ISO の情報開示の意義と課題 「組織の目線から」
    味の素株式会社 環境・安全部 専任部長 田辺 和光 氏

    報告者の所属する組織の ISO 14001 運用体験を紹介し、これまで組織はステークホルダー求めに応じて、または自発的に情報開示を行ってきたが、ステークホルダーは、結果の情報開示に加え、組織の将来が期待できるような情報開示を求めてきているとの考え方を示しました。注目すべきは進行中の組織活動であり、その良し悪しはマネジメントの良否を見ることで判別可能であると述べ、これらの考察を3つの事例を交えて解説しました。プロセスを積極的に開示すれば、ISO 14001 要求事項の確実な実行の証明となる、と説明し、実績を積むことで ISO 14001 と良いパフォーマンスの結果との関係がより強固になる、と述べました。情報開示をする組織が増えれば、ISO が将来の方向性予測を示すという有用性が認知され、ISO 14001 の価値および認証組織の価値も向上する、との展望が示されました。

  4. 環境 ISO の情報開示の意義と課題 「消費者・社会の目線から」
    ジャーナリスト・環境カウンセラー 崎田 裕子 氏

    消費者・社会は、環境ISOへの期待を高めているものの、組織の認証取得だけでは納得していない点を指摘。環境ISOについての広報を徹底させることと同時に、環境ISOを認証し運用している組織の環境活動のプロセス開示が肝要であると述べました。現状の組織における情報開示に対する満足度は決して高くないことをデータで示し、細分化したステークホルダー別のニーズを分析。これをベースに、1) 開示内容は、ネガティブ情報開示(信頼性回復がねらい)とポジティブ情報開示(信頼性向上がねらい)の両面を、2) 開示方法は、プロセスの情報開示に消費者・社会が参加できる仕組みを取り入れるべき、3) 今後の課題として、「情報の比較可能性」「信頼性の向上」「情報開示がインセンティブとなること」などを挙げ、それぞれについて具体的事例を示しながら解説を行いました。最後に、認証制度を組織の持続可能な成長につなげていくためにも、広く消費者・社会の参画と、投資家や金融ニーズを意識した、「相互交流」できる「過程」情報開示が重要である、とまとめました。

  5. 環境 ISO の情報開示の意義と課題 「認証機関の目線から」
    財団法人 日本品質保証機構 マネジメントシステム部門 理事 穂高 志郎 氏

    冒頭に、今回の議論のスタートとなった「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」等を紹介。続いて、認証機関が認証審査を通して行っている情報開示の現状を説明。認証機関は、適合性評価の結果である登録内容を開示しているが、パフォーマンスを含めた結果の情報開示のニーズの存在も認識していることを述べました。しかし、仕組みにおける環境情報の保証の信頼性については、認証機関と組織との機密保持などの制約があり限界があること、また、情報開示は組織が自主的に任意で行うことが基本であることを説明。一方、これらの制約を踏まえながらも、現在 MS 認証懇談会において自主開示のガイドラインを検討中であることを紹介しました。開示に対するニーズと制約を考慮しながらも、透明性拡大と信頼性向上、 ISO 認証を普及拡大して全体の信頼性を向上させることが情報開示の意義であろう、と述べました。審査というコミュニケーションの場を活かして、できる範囲から情報開示を進めていきたい、と締めくくりました。

  6. パネルディスカッション
    「情報開示-環境 ISO の信頼性向上のために」

    プログラム後半は、西尾氏、田辺氏、崎田氏、穂高氏に加えて統計数理研究所・副所長 リスク解析戦略研究センター長 椿広計氏および本協会常務理事・認定センター長 久保真の6名によるパネルディスカッションを行いました。
    パネルディスカッションのポイントは以下のとおり:

    1. 環境 ISO の仕組みやプロセスを開示するメリットは何か。特に、競争優位性や消費者の魅力度を高めるという観点で、開示するメリットを捉えることはできるのか。
    2. 情報開示は組織が自主的に行うことが原則ではあるが、社会の受容性を高める、組織の信頼性を高める、制度の信頼性を高めるためには、どんなサポートが必要か。あるいはどんなサポートができるのか。
    3. JAB が中心となって準備を進めている「情報公開プログラム」に対して、その必要性や期待、含めてほしい内容はどのようなものか。

     

    これらの論点について、会場の参加者を交えながら活発な意見交換がありました。最後に、西尾チヅル氏より、パネルディスカッションの総括として、

    • 情報開示のメリットは、組織・消費者・社会・認証機関・認定機関それぞれにある
    • 社会から適切に評価されるような情報開示の内容であることが必要で、共通のフレームが求められている
    • 環境 ISO 制度が信頼性の高い制度として評価され続けるためには、組織・認証機関の積極的な協力が不可欠
    などを述べ、本大会を締めくくりました。

     

以上

 

環境 ISO 大会風景

 

 

■本件に関する問合せ先■
公益財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail. CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1210 Fax.03-5475-2780

認定センター
Tel.03-3442-1214 Fax.03-5475-2780

 

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