第18回 PAC (太平洋認定協力機構) 総会参加報告

2011年 8月 1日
公益財団法人 日本適合性認定協会

2011年6月11日から17日まで、フィリピン・マニラにて第18回 PAC 総会が開催されました。
主要事項について、概要を報告いたします。

  1. オープニングセレモニー

    総会を主催する PAO の挨拶に続き、フィリピン貿易産業省の Zenaida Maglaya 次官が以下の内容の講演を行った。
    「世界貿易の推進において、認証制度は重要な役割を果たしているが、その役割を更に効果的にしているのは、認定の国際的な相互承認 (MLA) 制度である。MLA の維持・強化に対する PAC の貢献は大きく、今後とも継続して国際貿易の発展に寄与することを期待する。」
    Maglaya 次官のスピーチへの答礼として、PAC 議長の井口 (JAB) が挨拶をし、PAC MLA の積極的な推進に向けて努力することを表明した。

  2. PAC セミナー

    PAC が MLA の拡大を進めている 4プロジェクトの推進リーダーが、MLA の意義、拡大プロジェクトの進捗状況、今後の予定等を報告した。

    1) 食品安全マネジメントシステム (FSMS)

    食品安全への関心が高まり、HACCP から FSMS (ISO 22000) へとISO 規格も整備され、原材料から流通までがカバーされることから、ISO 22000 に基づくFSMS 認証も広がってきた。また食品の貿易も拡大し、1国での認証が他国でも認められることになる MLA への期待も大きく、IAF (国際認定フォーラム) でも MLA 拡大に向け作業が始まっている。PAC では、2012年の正式開始に向け準備作業を進めている。

    2) 温室効果ガス (GHG)

    現在、9か国で GHG 検証プログラムを運用し、さらに 9か国が準備中である。このような中、GHG 検証に対する認定制度を調和させることの意義は大きく、MLA の推進が期待されている。PAC メンバーは MLA に積極的であり、IAF に先駆け PAC から MLA 構築を実施するべく協議している。

    3) 情報セキュリティマネジメントシステム (ISMS)

    近年の IT 技術の発展、広がりにより、リスク対策が重要となり、ISMS 規格の開発が進み、それに基づく認証活動も活発になってきている。ISMS 認証の価値は、IT 専門家が技術一辺倒の考え方でなく、マネジメントシステムの思考方法を身につけることにより、今後ダイナミックに進化する業務において、情報セキュリティにシステマティックに取り組むことができ、効果的効率的な運営を達成できることにある。
    PAC では、既に 8機関が認定を開始しており、MLA に向け準備している。また IAF でも、MLA を推進するための作業を開始する。

    4) 要員認証

    要員認証の必要性とメリットは拡大しており、特に米国では政府機関で要員認証の活用が進みつつある。企業においても、要員の訓練コスト削減が重要となってきており、雇用の日から使える要員であることを保証する認証制度にメリットがある。食品を含む各種の安全を保証する分野では、検査を実施する要員の質が重要であり、このような分野では政府が強い関心を持っていることから、要員認証が期待されている。

  3. オープンフォーラム

    技術委員会議長より、MLA 拡大のために技術委員会と MLA 管理委員会で、拡大対象の 4つのプログラムに対し、合同作業グループを形成したこと、その役割について説明があった。その後、4グループの主査が各々ワークショップを開催し、 MLA 拡大に向けて議論を行った。

  4. 技術委員会 (Technical Committee Meeting)

    各プログラムを担当する作業グループ (WG) から、活動報告、IAF の関連活動、その他関連情報の報告が行われた。

    1) FSMS

    PAC 及び IAF の FSMS WG の活動報告が行われた。また PAC メンバーより照会のあった ISO/TS 22003 適用における懸念事項に対し、技術委員会メンバーに意見が求められた。ISOI/TS 22003 のカテゴリー L に示される「drugs」には何が含まれるか、veterinary drug のみが含まれるのか、その他にも法規制上は drug としては扱われない herbal product のようなものが含まれるかどうかが議論の対象で、ISO/TC 34 へ定義あるいは明確化を求めることになった。さらにオープンフォーラムのワークショップでの議論に基づき、相互承認プロセスと相互承認評価員の力量に関する提案を行い、MLA 管理委員会へ承認を求めることが承認された。

    2) ISMS

    ISMS MLA 拡大のための活動が報告され、さらにオープンフォーラムのワークショップでの議論の結果が報告された。相互承認プロセスの提案が行われ、MLA 管理委員会へ承認を求めることが了解された。相互承認評価員の力量に関してはさらに議論が継続されることになり、現時点では結論が出されなかった。IAF で今後議論される認定範囲について、IAF での議論に取り入れるために、PAC TC メンバーに対し現状調査を行うことになった。

    3) ITSMS (ITサービスマネジメントシステム)

    ISO 20000-1 改定を受け、認証の移行に関する問題提起が行われた。EA (European Cooperation for Accreditation) では移行に関するルールが設定されているが、IAF および PAC では未だ議論が行われていない。PAC TC メンバーでこのプログラムを運用している認定機関は 3機関のみであることから、EA のルールを採用することとなった。

    4) GHG

    IAF での活動内容や、PAC での MLA に向けての活動内容が報告された。MLA でカバーされる範囲、MLAのlevel 5 に含まれる基準を明確にする必要があり、さらにカーボンフットプリントや ISO 14067 をどのように扱うかを検討する必要がある。また認定審査チームに必要な知識および技能、相互承認評価員の力量に関しても議論されている。

    5) 要員認証

    IAF での議論、Open Forum の Workshop での議論の報告が行われた。認定審査員および相互承認評価員のトレーニングの提案が行われた。

    6) ISO 13485 (医療機器品質マネジメントシステム)

    IAF 作成の 2文書が近々に発行されることの説明と、これらの適用に対し懸念がある場合は連絡するよう依頼があった。ISO 13485 では MLA は未だ成立していないため、これらの文書が全 IAF メンバーに適用されることに違和感があるというコメントがあった。また認定機関によっては、国の法律に基づくスキームを運営している場合があり (例: カナダ) 、このような場合、2文書の適用はどのように考えるべきかという問題提起があった。

    7) その他

    CNAS (中国)、KAB (韓国)、JAB、TAF (台湾) の 4認定機関からの Cross Frontier Accreditation (国外認定) の問題点に関する審議文書を提出した。これは IAF でも 5年越しに議論され未だ決着のつかない根の深い問題であり、IAF での議論が進まないのなら PAC で独自の管理を行うための文書を作るという提案も出たが、国外認定の問題の対極に立つのは、UKAS (英国)、RvA (オランダ)、DAkkS (ドイツ)などの非 PAC メンバーであり、IAF での動きにしなければ効果がないという意見が大勢を占めた。4機関の提出した審議文書に基づき、IAF 技術委員会へ審議文書を出すとともに、国外認定に関する PAC 文書の必要性に関して検討するグループを結成することになった。

    TC 議長から、今後の作業課題/プロジェクトの提案があった。各認定機関が各々の認定プロセスや手法に関する情報共有を行うことは有益であり、基本的に賛同された。まず、例示された複数項目の中から検討課題を選定するため、グループを結成することになった。

  5. 開発国支援委員会
    • 過去1年間に行われた 2件の FSMS 研修、1件の製品認定にかかる研修などが報告された。また GHG 研修を調整した JAB、研修資金の提供機関、当該研修を主催した PAC メンバーに対して謝辞が述べられた。
    • オーガニック製品に関する研修を 8月に予定しているとの報告があった。また、今後とも、GHG や2012年の制改定予定の ISO/IEC 17024、ISO/IEC 17065 の研修が必要との意見があった。
    • PBT (ドイツに本部を置くファンド・研修提供機関) より、インド、ネパール、モンゴルなどにおける規格認証制度に関する支援活動のプレゼンテーションがあった。また、これまでの PBT 構築研修や将来の検討課題などに関する意見交換があった。
    • PAC 事務局より、APEC のファンド取得のため、GHG に関する訓練を企画することの提案があった。APEC では GHG 対応が優先課題とされており、概ね申請の受け入れが見込まれることが背景にある。

     

  6. CMC 委員会 (Communication and Marketing Committee Meeting)
    • PAC DVD の更新、PAC 冊子検討 WG の設置、IAF ニュースレター・PAC ニュースレターの紹介、PAC ウェブサイトへのアクセス数に関する報告などがあった。
    • IAF CMC 議長より、本年の国際認定推進の日を踏まえ、"You Tube" を利用したメッセージビデオを制作したことの紹介があった。また、韓国、カザフスタン、メキシコ、インドネシアの各認定機関から、セミナーなどを実施したことの報告があった。
    • IAF CMC 議長より、ILAC CMC と共同で活動を行っていること、規制当局による制度利用のベストプラクティスなどのドラフト作成作業を進めていること、IAF ウェブサイトの改良作業を進めていることなどの報告があった。また、IAF 上海総会以降、エンドユーザー調査を進めており、11月予定の IAF バンコク総会で調査報告を行う予定であることの説明があった。

     

  7. 相互承認 (MLA) グループ会議

    Peer Evaluator (相互承認評価員) 選考基準の改定案の提示、新規 MLA プログラムについて拡大申請の意思確認が行われた。

  8. ISO/IEC 17021:2011 に関するワークショップ
    • 改定部分を中心に解説があった。ISO/IEC 17021 では審査員の力量が注目されがちであるが、この規格は個々人の力量を定めるためのものではなく、力量のある要員をどのように管理し、使っていくかを示すためのものであることが強調された。
    • 近々全体の見直しが行われる予定であり、今回改定では盛り込まれなかった部分 (例: 審査員の評価を行う要員の力量基準) が追加される可能性のあることが示された。

     

  9. 認定のコミュニケーション及びプロモーションに関するワークショップ
    • IAF CMC 議長より、相互評価の結果の可視化、IAFウェブサイトを分かり易くする、利害関係者へのプレゼンテーションの蓄積/コーディネートを目的に活動するとの報告とともに、これら活動の重要性について説明があった。
    • 事務局より IAF の広報活動の詳細およびウェブサイトの活用に関して説明が行われた。

     

  10. 総会
    • PAC メンバーは、Full Member 28、Associate Member 5 の計33組織となった。
    • IAF による PAC の評価の一環として、2010年 2月に事務所審査が実施された。PAC の行う相互評価への立会を経て、2011年後半に完了する予定。
    • 2009年から2011年の 3年間の PAC Strategic Plan が運用された。次期は、2012-2015年の 3年の計画を策定する。
    • APLAC と PAC の総会部分を同時同場所で開催する構想が PAC 議長より提示され、質疑・意見交換がなされた。今後議論を行うこととし、そのための作業グループの設置とメンバーを決定した。将来的には APLAC とともに共同の提案をまとめるとの表明があった。
    • その他、収支報告、2012年度予算の上程、役員等選出が行われた。
    • 次回は 2012年 香港にて開催予定。

     

開催挨拶をする PAC 議長 (JAB 専務理事・事務局長 井口新一)

開催挨拶をする PAC 議長 (JAB 専務理事・事務局長 井口新一)

■本件に関する問合せ先■
公益財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail. CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780

 

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