第18回 JAB/ISO 9001公開討論会 報告 (概要)
2012年5月16日
公益財団法人 日本適合性認定協会
2012年3月13日、本協会主催による第18回 JAB/ISO 9001 公開討論会が、有楽町朝日ホール (東京都千代田区) において、約400名の参加者を迎えて開催されました。
メインテーマは「ISO 9001 認証のブランド価値を高める」
近年、品質マネジメントシステム認証数は伸び悩み傾向にあり、この状況を改善し、第三者適合性評価制度のさらなる普及と有効活用を図るためには、認証の価値の向上が不可欠です。そこで2011年度のJAB/ISO 9001研究会では、ISO 9001 認証に対する強い信頼感・信用、ISO 9001 の QMS モデルの有用性に対する高い評価を「ISO 9001 認証のブランド価値」と捉え、認証の意義と価値となる要素を抽出し、ISO 9001 認証が価値向上にどのように寄与できるかを考察することにいたしました。
基調講演「ISO 9001 認証のブランド価値を高める」
東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻 特任教授 飯塚 悦功 氏
はじめに、上記考察を行うための基礎知識として、ISO 9001 の歴史と認証制度の意義を解説。認証取得側は自身の能力を証明でき、認証結果の利用者側は、第三者による客観的評価を活用することで選択の質と効率向上が見込まれ、社会全体のレベルアップを図る仕組みであることを再度確認しました。続いて ISO 9001 の持つブランド価値の意味に触れ、価値を享受する対象は製品提供者・購入者・事業支援者・業界・社会・行政など、様々な分野に存在しており、1) 認証の基準を明確にすること 2) 社会のニーズに合っているかを常に確認し、必要に応じ改訂を検討すること 3) 基準に適合するための活動が真面目に取り組まれていること 4) 認証プロセスが適切であること 5) 認証結果を適切に活用すること、などが満たされて初めて、「ISO 9001 のブランド価値」が向上するのであろう、と述べられました。この前提をもとに、JAB/ISO 9001 研究会では、「消費者」「社会」「産業」の3つの視点から ISO 9001 のブランド価値とそれぞれの関係性を議論したことを紹介し、各WGによる報告へと引き継ぎました。
以下は、JAB/ISO 9001 研究会メンバーによる研究報告の要約です。
WG1 消費者の視点から~お客様の期待を裏切らない製品の提供~
発表者:ビューローベリタスジャパン株式会社 システム認証事業本部
テクニカルオフィサー 兼 テクニカル部長
景井 和彦 氏
消費者が購買する製品・サービスと ISO 9001 認証制度に、どのような関係や意義があるのか、という視点で考察した結果を報告しました。
冒頭で消費者の ISO 9001 認証に対する認識や関心、組織と消費者の相互関係などを分析。消費者は、認証と信頼の意味を必ずしも生活感覚では捉えていないが、安全・安心の面でトレーサビリティや苦情対応などへの関心は高いと説明。そこで、プロセスにおける消費者と組織の接点を生活に密着した3つのポイント 1) 契約 2) トレーサビリティ 3) 苦情処理 をそれぞれ事例で紹介し、本制度の意図する消費者への価値提供について、分かり易く解説しました。これらを踏まえ、組織と消費者をより密接に結び付けて信頼関係を築くには、両者双方向のコミュニケーションの枠組み構築がキーとなると述べました。また、消費者に向けて組織が認証を取得している情報を発信することが非常に重要であり、ウェブサイトへの掲示や JIREC (認証組織自主公開プログラム) などを活用して、認証取得をアピールしてほしいと訴えました。
WG2 社会の視点から~安全・安心で豊かな社会の実現~
発表者:日本検査キューエイ株式会社 審査第2部長
勝俣 宏行 氏
社会に共生する国民、行政、組織などの安全・安心、豊かさに対し、どのようにISO 9001が寄与できるのかについて研究した結果の報告がありました。
はじめに、本制度を評価するには、誰もが納得できる評価尺度があり、評価結果の良し悪しが見える化されていることが原点にあるべき、と述べました。制度が社会的に受容されるレベルであり、意義ある認証なら、関係者はレベルアップに努め、安心できる豊かな社会の実現につながると説明。続いて、レベルアップの価値提供の実現事例として地域行政の制度活用例を紹介。また、認証の社会的価値の活用事例として、輸入規制緩和や国土交通省の工事入札などについて解説を行いました。これらの解説ののち、認証の社会的価値についてはこの他にも活用の領域が存在するはずであり、さらなる認証制度への信頼性維持・向上へ取り組んで欲しいと述べました。認証の価値を利用できなかった際のフィードバック機能や組織の認証情報の開示、認証の社会的価値の向上に向けた活動など具体案を示し、最後に制度の幅広い普及啓発活動の展開により認証の社会的価値の利用促進を図ることを提言しました。
WG3 産業の視点から~産業競争力強化への貢献~
発表者:株式会社 DNPファシリティサービス 技術開発本部 ISO 支援推進室
武田 昌彦 氏
産業界にとって ISO 9001 認証にはどのような価値があり、その価値を決定づける要因、価値を向上させるために何が必要なのかといったことについて検討した内容について報告がありました。
産業界を 1) 売り手である認証企業 2) 買い手である企業 3) 認証企業が属する業界・サプライチェーンの3つの立場に分け、それぞれの制度の価値と、制度が価値を生む構造と課題を分析。立場の違いにより制度への期待や意味、価値が異なることを、具体例を挙げながら説明しました。さらに、価値を生む構造として、ISO 9001の正しい理解、適正な審査、認証情報の活用、顧客の声が制度へ反映される、の4点が重要であり、これらの適切性が課題であると述べました。また、セクター規格の活動事例を紹介し、 ISO 9001 認証制度への応用の可能性を検討した結果も報告されました。最後に、1) 2) 3) の各立場に向けて、認証制度の継続的改善のサイクル形成のために、産業界の積極的な関与を提言し、WG 報告を締めくくりました。
午後は、WG 発表3名の方々及び ISO 9001 研究会メンバーから 公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 戸部依子氏、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 住本守氏、社団法人 日本航空宇宙工業会 小森秀司氏、本協会 認定センター長 久保真が加わり、飯塚教授をコーディネーターとしたパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、討論会開催前に JAB ウェブサイトに掲載された資料について出された27の質問への回答が示されるとともに、会場参加者と意見交換が行われました。
当日使用したテキスト及び事前に寄せられた質問項目とそれに対する回答は、以下の資料をご覧願います。
- 当日使用テキスト
- 基調講演 (案) (PDF 293KB)
- WG1 資料 (案) (PDF 1.06MB)
- WG2 資料 (案) (PDF 673KB)
- WG3 資料 (案) (PDF 311KB)
- 事前に寄せられた質問項目とそれに対する回答 (PDF 290KB)
参加者の皆様には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

本件に関するお問い合わせ先
公益財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail. CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1210 Fax.03-5475-2780
認定センター CB
Tel.03-3442-1214 Fax.03-5475-2780