第19回 PAC (太平洋認定協力機構) 総会参加報告
2012年7月27日
公益財団法人 日本適合性認定協会
2012年6月16日から22日、香港にて第19回 PAC 総会が開催されました。主要事項について、概要を報告いたします。
1. PACセミナー
1) MLA (認定の国際的な相互承認) のビジネスメリット
MLA の目的、仕組みの説明に続いて MLA の直接的ビジネスメリットについて、JAS-ANZ (オーストラリア・ニュージーランドの認定機関) が大学に依頼した調査結果が報告された。サプライチェーンにおける ISO 9001 認証については、貧弱な品質パフォーマンスの改善、好まれるサプライヤーの地位の獲得、国際市場へのアクセスを得られる等の効用が示された。ISO 14001 認証では、認証取得により、会社のイメージ改善、改善範囲の特定、具体的なコスト削減等の効果も確認されたとの報告があった。
2) 認証の需要を支える HKAS 認定サービス
ホスト機関のHKAS (香港の認定機関) から、品質インフラ (標準・度量衡・適合性評価) の重要性、それを支える認定の重要性が強調され、HKAS の認定サービスの概要が説明された。
3) 香港の認証産業の現状と将来
香港の認証産業の現状と将来について、報告があった。香港を経由する貿易により、大きな試験・認証サービスのニーズがあり、香港経済のひとつの柱である。
4) 中国漢方医薬製品認証スキーム
漢方医薬の製造・販売は、香港経済の重要な位置を占めるが、これをさらに促進・発展させ、消費者の信頼を高めるために、漢方医薬の認証スキームの立上げが行われようとしている。
5) インド伝統医療アユルベーダ医療に関する認定・認証スキーム
5000年の歴史を持つアユルベーダ医療は、統合的・ホーリスティック医療として見直されている。さらに消費者の信頼を高め、法令順守を徹底し、アユルベーダ医療に対する国際的な認知を得るために、インドでは認定・認証スキームを立ち上げることになった。
6) ISO/IEC 27001 のビジネスメリット・最新の状況
最新情報として、グーグルがクラウド・サービスで ISO/IEC 27001 認証を取得したこと、ガイド83 をベースに ISO/IEC 27001 の見直しが開始されていること、ISO/IEC 27001 のセクター規格の開発が進んでいること等が報告された。
7) 中国第12回5か年計画におけるグリーン認定・認証の役割
中国で行われている5か年ごとの経済・社会の発展における計画について、そのパートVI がグリーン開発 (資源保護と環境に優しい社会の開発) であること等が説明された。
8) 香港のビジネスにおけるGHG (温室効果ガス) 妥当性確認/検証の重要性
香港での GHG 削減目標と、会社のリスクマネジメントの一環としての重要性が報告された。また、香港における主な GHG 排出は建築物由来であり、香港政庁環境保護署及び機電工程署は、建築物から発生する GHG 削減のガイドラインを作成し、その普及活動を行っているとの報告があった。
9) グリーン認証がどのようにビジネス競争力を強化するか
気候変動が地球に影響を与えている状況下で、企業のビジネスにおいて、CSR はますます重要性を増し、企業のイノベーション・競争力・優位性を強化することが報告された。
10) 香港サイエンス・パークにおける ISO 50001 の実践
香港サイエンス・パークにおける ISO 50001 の実践の報告があった。
2. 技術委員会 (Technical Committee Meeting)
1) PAC WG (作業グループ) 主査による活動報告
- 食品安全マネジメントシステム (FSMS) 主査: JAB 中川
MLA 拡大のための作業がほぼ終了。活動の一環で PAC 文書を作成し、投票が終了し可決されたことが報告された。今後は投票時に出されたコメントへの対応を行い、発行プロセスに入る。 - 情報セキュリティマネジメントシステム (ISMS) 主査: JAB 中川
MLA 拡大のための活動の概要の説明があり、若干の作業遅れと、引き続き議論が必要な事項が残されていることが確認された。ISMS のための PAC 文書が作成され、コメント募集は終了した。コメントへの対応を行い、本 PAC 文書の内容は IAF に対するインプットとする。 - 温室効果ガス (GHG) 主査: JISC 牧野
PAC メンバーの ISO 14065 運用状況や、MLA に向けたトレーニングコースが行われたことが説明された。また、IAF で作成された3文書を PAC 文書として採用し、PAC 内で文書発行のための投票を行っている。これに基づき、PAC/MLA に向けての準備はほぼ完了した。 - 要員認証
要員認証の MLA においては、各認定機関は full evaluation (文書レビュー、事務所審査、立会い) を受けなければならない。立会いに、パフォーマンス確認のための試験への立会いを含める必要があるか否かは議論が必要であるとの説明があった。 MLA 開始のために IAF 文書の改定が行われ、4月の IAF TC では Peer Evaluator (相互承認評価員) トレーニングを行った。本トレーニングは地域グループ間の整合のためにさらに必要と考えており、2013年初めに実施予定である。また、ISO/IEC 17024 は8月に発行予定で、次回 IAF で移行手順等を定める予定である、との報告があった。
2) その他関連情報など
- PBT (ドイツに本部を置くファンド・研修提供機関)で行われた organic に関するトレーニングにおいて「Draft PAC document on application of ISO/IEC Guide 65 to organic certification under EU legislation on organic farming」が作成された。Guide 65 を補うもので、PAC WG を作り、本案をもとに PAC 文書を検討することになった。
- 提出されたディスカッション・ペーパーについて意見交換を行った。
- IAF TC 活動報告
- ISO/CASCO 活動報告
- PAC TC メンバーのみ閲覧可のサイトを作り、関連文書を保管することを検討しているとの説明があった。
- PAC メンバーの各種活動への参加を高めることが必要であり、そのために TC としてなすべきことについて意見交換が行われた。
3. 開発国支援委員会(Developing Programs Committee Meeting)
今回の PAC 総会に、カンボジア・ミャンマー・ネパール・ブータン・ラオスからの参加があったことが報告された。
1) 2011-12年の研修活動報告
- PTB、APEC から助成を受けて実施された。
- NCA (カザフスタン) 主催で、アスタニアで国際会議が行われ、PAC CMC 副議長が参加。
- ISO・ITU・IAF・ILAC の共同で、ダッカにてテレコム・セクターに関するワークショップが実施され、PAC副議長が参加。
- PTB の支援により有機農産物認証に関する研修が実施された。
- GHG Validation / Verification (妥当性確認・検証) に関する研修が APEC 基金により実施された。2012年3月に TAF 主催で台北にて GHG 規格についての研修が実施され、5月には JAB 主催で京都にて認定審査員力量の構築に焦点を当て研修が実施された。
- 今回の香港総会では、ISO/IEC 17021:2011 の認定審査に関する経験を共有するためのワークショップが計画されている。
2) 2013年度研修計画
各メンバーから、現在改正中の規格である ISO/IEC 17065 (&17067) 、ISO/IEC 17024 などの研修ニーズがあった。その他の要望として、ISO/IEC 17025、ISO 15189、GHG 規格、EnMS、ISMS、QMS、EMS 規格についての研修を望む声もあった。
3) その他
- IAF 開発支援委員会の進捗報告があり、途上国への助成について説明があった。
- UNIDO が東アジアで実施した ISO 9001 認証の調査について紹介があった。
- DCMAS (度量衡・認定・規格分野において途上国を支援する国際組織) に関する説明があった。
4. CMC 委員会 (Communication and Marketing Committee Meeting)
- CMC ワークプランの進捗状況の報告があった。
- PAC のDVD、冊子
一部メンバーからの支援もあり、無料で DVD 開発可能な見込みであることが報告された。冊子は既に改訂案が開発されており、最終的な編集作業などを行い、本会議後に正式に発行予定であるとの説明があった。また、DVD については今後、具体的に画像を含めた開発が進められる予定。 - PAC ニュースレター、ウェブサイト
ニュースの発信形態について、SNS など他のツールの活用も検討する必要がある旨の意見があった。 - 国際認定推進の日に関連した活動の紹介
- 「認定を受けた認証の促進」に関して、非公式な作業グループにより検討された文書の提示があった。
5. 相互承認 (MLA) グループ会議
- 相互評価員養成のためのトレーニングを2回実施し、計35名程度が参加した。しかし稼働可能な評価員の不足は継続しており、特に MLA 拡大が行われる分野での確保が必要である。
- 相互評価結果の確認と投票が行われた。
- 改定を予定している MLA 文書4件について、概要説明が行われた。
- 各メンバーから、MLA 拡大申請予定や近況報告があった。
6. ISO/IEC 17021:2011 に関するワークショップ
- 力量に関する CASCO 規格開発における経緯や、"qualification" から "competence" に変化してきた過程やその相違などの説明があった。
- ISO/IEC 17021:2011 改正の背景、17021 に基づく認定審査に関して認定機関に対する課題提起、プロセスアプローチの考え方、認証機関にとっての KPI (重要業績評価指標) や不適合製品などに関するプレゼンテーションがあった。
- 会議事前に収集された ISO/IEC 17021:2011 要求事項に関する質問、意見について4グループに分かれて検討し、その結果を報告した。
7. 総会
- PAC メンバーは正会員29、準会員7の計36組織となった。
- IAF によるPAC に対する Peer Evaluation (QMS、EMS、Product) は2010年に開始、間もなく完了の予定。
- GHG 及び FSMS の MLA を開始する。次は要員及び ISMS の予定。
- 2011年度決算、2012年度見通し、2013年度予算が報告された。
- PAC のStrategic Plan 2012-2015 は、各委員会での議論を踏まえ EC で今後取り纏めることとなった。
- 次回総会は2013年5月にホノルル、次々回は APLAC との合同で2014年メキシコにて開催予定。
本件に関するお問い合わせ先
公益財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail. CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1218 Fax.03-5475-2780