第2回 JABマネジメントシステムシンポジウム 開催報告(概要)

2014年3月25日
公益財団法人 日本適合性認定協会

本協会は、2014年3月13日に「第2回 JABマネジメントシステムシンポジウム」を有楽町朝日ホール(東京都千代田区)にて開催いたしました。

[開催趣旨]

複数のマネジメントシステム(MS)が開発・発行されている現在、これらを効果的に活用し、MS認証の信頼性を確保することが組織や認証における課題となっています。このテーマを検討するため、本協会は昨年度よりMS研究会を立ち上げ、活動を行っています。今年度も引き続き、「複数のMS規格を効果的に使う」をメインテーマに研究を行い、その結果を本シンポジウムにて報告することといたしました。

[講演概要]

基調講演  マネジメントシステム規格の開発動向 -ISO 9001を中心に-
筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授  山田 秀  氏

「組織の繁栄には品質、環境など複数側面への対応が不可欠」を端緒に、組織が複数の側面と向き合うためのキーポイントと、それに対するMSの役割を紹介。加えて、トップ・組織・審査・社会のそれぞれの立場からみた複数側面の考慮に関する課題や期待を列挙し、さらに、品質・環境を考慮した展開を例で示し、参加者間で認識の一致を図りました。続いて、MS規格の整合化のために開発されたAnnex SLの位置づけと内容に触れた後、Annex SLの各箇条と開発中のISO 9001・ISO 14001を対比させながら最新情報を解説しました。ISO 9001ではプロセスアプローチによるQMS構築が要求されている/製品実現に関する要求が大幅に強化されている/顧客満足の測定、データ分析についての要求が追加されている、などを説明。ISO 14001では環境側面の特定や順守すべき条例等の特定等が大幅に強化されている/コンプライアンス評価の追加、などを解説しました。

続いて、JABマネジメントシステム研究会メンバーより、研究報告が行われました。

WG1
複数のマネジメントシステム規格を採用したMSの構築 ~MS構築の視点~
株式会社テクノファ 研修事業部 部長  須田 晋介  氏

事例紹介
複数のMS規格を採用したMSの構築・運営事例 -JAあいち経済連における取組み-
愛知県経済農業協同組合連合会 リスク管理室 課長補佐  前田 京子 氏

組織が複数のMS規格を採用する場合に、MS構築に際して考慮すべき点を検討した結果を報告しました。はじめに、各MSと組織の事業プロセスの融合が示されているAnnex SL 5.1項を確認。次に、複数のMS規格採用に当たっては 1)重複の解消 2)相反する課題の調整 3)相乗効果の創出を考慮すべきと解説し、それぞれの解決のためのヒントや事例を示しました。また、実際に複数のMSを採用・構築/運営した組織から、取り組み事例の紹介がありました。当該組織は「MSはひとつ」と掲げ、上記1) 2) 3) の課題解決方法や経営上の効果、今後の課題等を示し、多くの参加者の参考となる情報が提供されました。最後に、既存のプロセス・MSは可視化によって理解が進み、組織内の共通認識(=全体観)を得られることにより組織の目的達成につながる、と締めくくりました。

WG2
 統合マネジメントシステムとその審査について考える ~MS審査の視点~
ロイド レジスター クオリティ アシュアランス リミテッド テクニカルオペレーションマネジャー  米岡 優子  氏

本報告は「組織のための、組織によるMSの統合と統合MS審査選択のために」がテーマであると伝え、審査の視点や課題について検討した内容を説明しました。テーマ選定の背景を紹介したのち、統合MSの定義と、統合のいくつかの形態を提示。マネジメントレビューの統合・運営管理の統合・あらゆるプロセスで統合、また、プロセスから考える統合・機能上での統合など、統合MSの考え方を整理しました。その上で、統合MS審査について、1) 審査実施に関する要求 2) 審査のメリット 3) 有効な審査実施、について解説を行いました。まとめとして、MS統合と統合MS審査という選択を行うことで、より自然に事業プロセスとの一体化が感じられ、ひとつのプロセスに各側面のインプットが入って運営されているMSが機能していることが分かるであろう、述べました。

WG3
Annex SLから読み取れる経営者へのメッセージ
独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター 客員調査員  住本 守  氏

Annex SLの4章・5章を踏まえ、組織の課題解決に貢献するMSの構築及び運営に役立つ経営者向けのメッセージについて検討した結果を報告しました。WG3では 1) 品質及び環境MS規格の視点でAnnex SLをWG3メンバーが疑似体験(要求事項を質問事項に置き換え、メンバーが回答)することにより比較評価する 2) Annex SLを通した品質及び環境MS規格に共通する経営者へのメッセージを抽出する、という進め方で検討を行いました。疑似体験結果は、「1 組織の課題の整理→MSの選択・優先順位」「2 利害関係者の顔」「3 コア領域」「4 MSの構築」「5 プロセス管理」の5点に集約され、これらは、メッセージを適用する4つの局面「MS規格の導入に際して」「複数のMS規格の導入に際して」「MS導入の計画策定に際して」「MSの構築及びプロセスの運営に際して」に整理できる、と説明。4つの局面各々について、トップのリーダーシップが不可欠・複数のMS規格の相乗効果への期待・事業全般のパフォーマンス向上への期待・MSの運営とプロセスの管理の責務を明確にすることでスムーズな運営が可能になる等、経営者に向けたキーメッセージを発信しました。
 

シンポジウムの最後にパネルディスカッションが行われました。
このため、参加者には当日受付時に質問票を配付し、パネルディスカッション開始前までに各講演に対する質問事項を募りました。
パネルディスカッションでは、各WGの発表者に加え、JABマネジメントシステム研究会メンバーから、日本検査キューエイ株式会社 勝俣 宏行  氏、東洋テック株式会社 柳舘 亮  氏、JAB  久保 真が参加し、山田教授をコーディネーターとして、事前に募った質問事項についてさまざまな意見が交わされました。

参加者の皆様には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

なお、当日の詳細につきましては、5月10日発行の「月刊アイソス6月号」に特集として掲載される予定です。
 

以上

 

本件に関するお問い合わせ先
公益財団法人 日本適合性認定協会
総務部 CS
E-mail. CS@jab.or.jp
Tel.03-3442-1210 Fax.03-5475-2780

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