第3回 JABマネジメントシステムシンポジウム 開催報告(概要)
2015年5月8日
公益財団法人 日本適合性認定協会
[開催概要]
メインテーマ: 2015年改訂に対応するマネジメントシステム
現在、2015年のISO 9001及びISO 14001の改訂作業が進んでいます。本年度のマネジメントシステムシンポジウムでは、規格の改訂が組織のマネジメントシステム(MS)に与える影響について、JAB MS研究会で検討した結果を報告しました。
JAB MS研究会は3つのワーキンググループ(WG)で構成されており、WG1は製造業の視点で、WG2はサービス業の視点で、それぞれISO 9001改訂が品質マネジメントシステムに与える影響を検討し、WG3はISO 14001の改訂に対し、どのような対応が必要かを検討してきました。
[講演概要]
基調講演: ISO 9001、14001改定の要点
筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授 山田 秀 氏
冒頭で、過去のISO 9001・ISO 14001開発と改訂の歴史と認証取得数の現状を紹介。続いて、附属書SLはMS規格の原型であることや、各箇条の意図、今回の改訂では非常に合理的な追加が行われていることを説明しました。さらに、一般からの質問が多い「リスク」と「機会」について触れ、用語の定義に深入りするのではなく、本質的なことは「起こりうる事態に適切にあらかじめ取組み、好ましくない事態を取り除くのが管理の狙いである」点を強調しました。最後に、附属書SLの構造とDIS 9001・DIS 14001から考える改訂の要点1) 全体を俯瞰する 2) トップのリーダーシップに基づく事業への組込み 3) 明示的なパフォーマンス要求 の3点を伝え、DISを用いて議論を進めたJAB MS研究会の報告へ引継ぎました。
WG1: 2015年の改正が製造業のQMSに与える影響・インパクトを考える
ヤマサ醤油株式会社 取締役 五十嵐 誠氏
架空の中小ビール製造業者が自らのQMSを強化するためにDIS 9001を活用したらどうなるか、をシミュレーションした結果を報告。DIS 9001の「箇条4 組織の状況」から「6 品質マネジメントシステムに関する計画」及び「9 パフォーマンス計画」への流れを理解し、改訂の変化点の影響を評価する重要ポイントを押さえました。例えば、「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」では、1) 官能 2) 品質の安定 3)安全・安心 4) 鮮度 の項目別に測定対象・監視部署・活動内容をまとめ、「6.3 変更の管理」では、発酵タンク及び貯酒タンクの増設とこれに伴い拡大する小ロット多品種生産への対応等、事例に対応して具体的に説明することで参加者の理解を促進しました。最後に、DIS 9001は2008年版に比して考え方が整理され、求められるものが明確になっていることから、製造業が持つべきQMSとしてより適したものとなっている、とのWGメッセージを発信しました。
WG2: DIS 9001に基づくQMS構築のポイント~サービス業におけるQMSを改めて考える
日本検査キューエイ株式会社 執行役員
カスタマイズ監査部 部長 兼 審査本部 特命担当部長 勝俣 宏行氏
サービス業へのDIS 9001適用について、焼肉店をモデルに議論した内容を2つの視点から紹介。1つめの視点「DISにより強化され、さらに効果的なPDCAサイクルに活用できる要素」では、潜在的顧客やターゲットとして狙っている顧客のニーズを含めてQMSを確立できるという期待があることや、サービス業において既に存在しているデータを明示化して分析すれば強みになり得るなど、具体的なDIS 9001活用法を説明。2つめの視点「サービス業からみたDISの個別箇条の活用事例」では、「8.7 不適合なプロセスアウトプット、製品及びサービスの管理」では、2008年版では不適合として捉えづらかったサービス提供時間の遅延の例を挙げ、「8.3 製品及びサービスの設計・開発」についてもメニュー開発例を示して、分かりやすく解説しました。まとめとして、DIS 9001を理解することで1) 現在の顧客以外の戦略に基づく顧客ニーズを組み込んだQMS 2) 小規模な組織のパフォーマンス向上に貢献するQMS 3) 組織の状況とその変化に対応可能なシステムとしてのQMS 4) 経営持続のための不可欠な要素となるQMSの4要素を組み込んだ戦略的QMSが構築することが期待できる、と述べました。
WG3: ISO 14001(2015年版)への具体的な対応
富士通株式会社 環境本部 グリーンマネジメント統括部 シニアエキスパート 川口 努氏
ISO 14001の主な改定ポイントを6点挙げ、各々に関して組織に求められるアクションを具体的に説明。1) 「リーダーシップ/事業プロセスへの統合」ではEMS活動の中心はリーダーシップにあることが強調された点、2) 「環境側面/環境影響」では、気候変動や生物多様性等の環境から受ける側面のプロセスを採り入れ対応すること、3) 「環境パフォーマンス」では、システムの継続的改善と指標を用いてパフォーマンス向上に繋がっていることを確認すること、4) 「ライフサイクル」ではEMSによる管理と影響の範囲をライフサイクル全体に拡大する例として、製造・情報システム開発/運用・コンビニエンスストア・銀行の4業態を挙げて解説、5) 「脅威及び機会に関連するリスク」では、リスクの定義を検討したのち著しい環境側面、順守義務、組織の課題について詳細かつ分かりやすく図表を使用して説明、 6) 「コミュニケーション」ではあらかじめ戦略的に情報の内容や時期、対象者など明確にしておくこと等を述べ、来る改定対応を組織の仕組みを見直すチャンスと捉えてほしい、と締めくくりました。
WGの報告の後、2014年度からスタートした「JABアワード ISOマネジメントシステム有効活用事例」の表彰式が行われました。詳細はこちらをご覧ください
シンポジウムの最後にパネルディスカッションが行われました。
当日、ご来場者からの質問を募り、WG主査・メンバーにて議論・フィードバックする機会を設けました。
パネルディスカッションでは、各WGの発表者に加え、JABマネジメントシステム研究会メンバーから、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 住本 守氏、株式会社 テクノファ 須田 晋介氏、一般財団法人 日本品質保証機構 森廣 義和氏が参加し、山田教授をコーディネーターとして、事前に募った質問事項についてさまざまな意見が交わされました。
参加者の皆様には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
なお、当日の詳細につきましては、5月10日発行の「月刊アイソス6月号」に特集として掲載される予定です。
以上
本件に関するお問い合わせ先
公益財団法人 日本適合性認定協会
認定センター CB
E-mail. info-cb@jab.or.jp
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